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2017年 全国幹事会への報告と提案(案)

3・26~27 於/岐阜 常任幹事会

広範な人に協会の存在を知らせ、夏のセミナーを迎えよう

 

昨年夏の第五十二回総会は、もう一つ新日本歌人協会創立七十周年に当たり改めて協会の意義を考えてみるという記念すべき総会として位置付けられた開催でした。
総会に先立って、編集部からの依頼で協会創立月の二月号に〈創立・創刊70年に思う〉とした所感を協会代表経験者である碓田、奈良、柳井、菊池各氏に寄せていただきました。各二ページの小文ながら、ここには当面する協会の問題点が的確に指摘、提言、示唆されており、さらに七十周年記念の九月号では巻頭緒言の碓田氏、記念小論の田中、津田、中山氏を加えてさらに突っ込んだ論考が掲載されそれぞれの観点から協会の現状を考えさせる貴重なものでした。
また十二月号の「この一年」では、協会への思いを長野氏が「試論」としての提言として寄せています。
それらはいずれも戦後の民主主義の最大の岐路に直面しているこの激動する今日いまの問題として、新日本歌人協会がどうあらねばならないかを、短歌創造という核心問題から、組織・運営、歌壇の中での連帯協同までを、包括して俯瞰するものになっています。
そのなかで碓田氏が啄木の「性急なる思想」を引いて言うように、「 強く、深く、痛切に」情況に真向かう歌ということをどう追求していくのかも大きな課題です。こうした作品創造の相互研鑽の場として「夏のセミナー」を準備します。

一、第五十二回総会以後の活動について

さて、総会以後の情勢も国民のいのちや暮らしをかえりみない政治の暴走・強行は止まることなく、平和を守る憲法をないがしろにする、自衛隊の南スーダンへの派兵や、沖縄の辺野古の基地建設工事再開、高江のオスプレイパッドや墜落事故がつぎつぎに起こっています。
そうしたなかで、協会の枠を超えた二つの大きなつどいをこの期間にもちました。
一つは十月三十日に開催の「憲法9条を考える歌人のつどい」です。これは二〇〇五年に「憲法九条を守る歌人の会」(九条歌人の会)の立ち上げと、第一回の講演会を開催してから毎年継続して今回が十二回目となりました。今回はイギリス在住の歌人渡辺幸一氏(在外短歌誌「世界樹」主宰)の来日に合わせての講演に恵まれました。
また、この集会に合わせて二〇〇八年から全国募集をおこない毎回作成してきている小冊子歌集『憲法歌集』の第九集も編集作成し、出詠者全員への送付もいたしました。
これらはもちろん他結社の呼びかけ人のみなさんとも協力準備しての取り組みですが、「九条歌人の会」事務局担当としてこうした作業実務の中心を担ってきているのです。
このほか、会の勉強会としての「短歌サロン九条」と毎月の九条の会「呼びかけ人会議」の開催、事務・会計係もおこない、少なくない負担を引き受けています。
こうした具体的なことはこれまでも詳しい報告がおこなわれていなかったと思いますが、現在の常任幹事会体制のなかで奮闘している実情をご理解いただきたいと思います。
もう一つは、すでに協会誌の一月号で報告いたしましたが十一月二十七日に「『平和万葉集 巻四』刊行記念のつどい」の開催です。刊行は五月でしたが、この間、8・15のつどいや協会の第五十二回総会や九条歌人の会のつどいなどがつながり、思い切って刊行半年後の開催としました。
つどいには刊行発起人の来嶋靖生さんが記念講演をおこない、水野昌雄さんに『平和万葉集』についての意義を語っていただきました。
また、ご参加の梓志乃、蒔田さくら子、遠役らく子、横山三樹さんらのスピーチもいただきました。ほかにも出詠歌人の歌の色紙をお願いして、刊行発起人の木村雅子氏ほか歌人十一人、歌人外の湯川れい子、海老名香葉子さんらに応えていただき、当日参加者へのプレゼントとして好評でした。
また会員有志での『平和万葉集 巻四』からの六十首抄出歌の朗読にも感動したという参会者の声が寄せられました。
この二つの集会やかかわりからも言えることは、私たちの活動は短歌を通じて、いまのこのような時代の激動のなかでこれまでにはなかったような人間的なつながりと、協会を超えた相互信頼と、協力協同が深まり広がっていることです。
九条歌人の会の「短歌サロン」、『憲法歌集』の継続にしても、『平和万葉集 巻四』への他結社の多くの歌人の参加にしても、「新日本歌人」誌への「憲法随想」他原稿の依頼への寄稿にしても、この激動のいまを生きる共通の関心と共感を短歌を通じて交流交感し合い連帯を強め発展させています。
またこの二月五日には、沖縄・那覇で歌人たちのシンポジウム「時代の危機に立ち上がる短歌」が開催されます。主催は「時代の危機に立ち上がる短歌」実行委員会・K5(強権に確執を醸す歌人の会)となっており、沖縄の歌人、本土の歌人たち共同の企画に拠るものです。
一昨年五月京都の「時代の危機に抵抗する短歌」、十二月東京の「時代の危機と向き合う短歌」のシンポジウムも話題を呼びましたが、いま、この時期に、沖縄現地で開催される「時代の危機」をテーマとした歌人たちのつどいは歌壇・歌人をも超えた強いメッセージとなると思います。
それにしても、民主的短歌運動をといい、九条歌人の会をすすめているわれわれが本来イニシアチブをもって働きかけることができなかった力不足をも残念に思うものです。
しかし、こうした歌人の行動がおこなわれることは、戦前に歌人の多くが戦争に翼賛協力したことを思うと、このことは短歌をつくっている者への大きな励ましでもあり確信として、一人でも多くの人に働きかけたいものです。

二、五年先、十年先を見通しての組織強化を

深刻な高齢化の進行

二〇一〇年の第四十九回総会に向けての総力をあげての取り組みで宿願の一〇〇〇名を突破し、第五十回総会ではさらに組織を強固なものにさせる意思をこめて一一〇〇名の協会への方針を掲げました。以後六年間、前進方向は見出せなかったものの、一〇〇〇名の大台は維持し続けて来ました。これは、毎月増減の推移を見ながら一喜一憂し、必死の努力を重ねてのものでした。
しかし、昨年十二月、この間守り続けた一〇〇〇名の大台割れが生じました。急激な減少は、会費・購読費の長期未納者への納入督促の実務過程で、退会・購読中止の申し出があったことによるもので多くは、協会誌を読むことすら出来なくなったなど高齢化によるものです。この高齢化はこの間、この数年急激にと言っても良いほど進行しています。全国的には、新しく支部を結成し、仲間を次々と増やし活動している支部がある一方で、全体的には高齢化によって、長い歴史を持つ支部・歌会で、会員が減少し、支部を廃止せざるを得ない状況も生まれています。
高齢化問題は深刻に受け止めなければならない課題です。現状の克服のため、今こそ、先進的な支部・歌会に学び、また協会挙げて、知恵を出し合い、活動を見直しながら堅固な土台を築き、新しい歴史を展望しながら進むことが求められています。

組織強化の重要性

組織の強化については、新日本歌人協会の創立時の精神を改めて踏まえ、確認しあうことが重要です。
新日本歌人協会は、短歌が戦争賛美に使われた痛烈な反省に立ち、自由に率直に、人びとの感情や思想を短歌形式によって表現し、その高い芸術的創造によって短歌の発展を期することを目的に掲げ出発しました。新日本歌人協会は、創造と運動とを統一した組織として出発し、「広範な人びとの生活・感情・思想を短歌を通じて豊かに表現し、将来に発展させる」(規約前文)ことに示されているように継承と発展を主軸に活動している組織です。私たちは、現時点も、この精神を引き継いでゆく使命を負っているといえます。
ふたたび戦争する国に突き進もうとする危うい政治情勢を危惧し、歌壇の中でも短歌の果たすべき役割を考えようとする動きが起こっています。一昨年の京都、東京でのシンポジウムに続いて、今年二月には沖縄でのシンポジウム「時代の危機に立ち上がる短歌」が開かれます。これらの歌壇、歌人との連携をより強めていく上でも新日本歌人協会の組織的な強化が求められています。

新しい仲間を増やす可能性

新しい仲間を増やすには、高齢者世代を始め、広範な世代に働きかけ、短歌表現での楽しさ、面白さをとにかく多くの人に知らせること、全国いたるところで、見える形で、新日本歌人協会の存在を知らせ、生き生き活動をしている姿を示すことにあると考えます。
幸い、短歌で感情を表現することは日本人に合い、小さい頃から五七五のリズムに慣れ親しみ、多くの人が啄木のうたの一つ、二つは諳んじていると言われます。また機会詩として東日本大震災での体験や、安保法制をめぐる国会闘争など、感情表現の分野では短歌の優位性が論じられることもありました。そのような中で自分を何らかの形で表現したいと思っている人は多く、その胸の火を炎に変える働きかけがあれば、短歌に近づき、協会への参加も可能となるでしょう。その働きかけを如何に広範囲に行うことが出来るか、協会を挙げて智恵を出し合うことが求められています。
また短歌は短い詩形と言うことも利点です。出来上がった歌は新日本歌人協会では投稿さえすれば必ず誌上に発表できる、これは小説や詩の分野と違った優位な点で、この利点をも大いに強調し、作品が活字になる喜びを伝え、仲間を増やしていく視点も重要です。

会員も購読者も

二〇一〇年十月の総数一〇三八名をピークに漸減の傾向が続き、組織強化のために特別に期間を設け、緊急の訴えや個々へ呼びかけなど続けて来ました。その結果、必然的に購読者を増やすことに偏りました。この一年間の拡大実数を見ても、会員は三一名、購読者は一二三名で、購読者の方が圧倒的に多いのが実態です。しかし会員の周りに多くの購読者がいることは良いことです。一方購読者は短期で止める傾向があります。これを改め、長く読者でいられるようにするため細かい手立てが求められています。問題は会員の増が少ない、会員も購読者もの視点が大事です。

作品の投稿を呼びかけあって

会員はもとより、購読者も短歌をつくりたい、良い短歌をつくりたいという気持ちを抱いています。短歌は実作者イコール読み手といわれるゆえんです。しかし、「自分はまだまだ自信がない」「八首は無理」などと自分で壁を築き投稿しない人が多くいます。一月号に投稿した会員は二八四名、投稿比率は五四%です。この実態を変えること、活動の基本に創造活動を置き、協会全体で投稿者数を増やす呼びかけを強めることが必要でしょう。購読者も同じく一月号の読者歌壇への投稿は三五名、投稿者比率は七%で、より丁寧な呼びかけが必要でしょう。会員の投稿が増えれば「新日本歌人」誌への愛着がより強まり普及への力になり、読者の投稿が増えれば入会への条件が強まるでしょう。
作品創造の向上の一つとして啄木コンクールへの応募があります。二〇一七年度のコンクールでは協会での応募者数を五〇名に置きましたが、この提起に応えて全員で応募しようと取組んだ支部もありました。例年実施しているコンクールに目標を定めて挑戦することも、作品の向上とともに生き生きした支部、歌会への変化を生みだすものと思います。
また、支部、歌会をより楽しく充実したものにする努力も引き続き重要です。そのために鑑賞力、批評力を高め、また学習活動も取り入れ、魅力ある支部、歌会にすることは新しく会員をふやすためには欠かせません。全国の多くの支部の経験を学びましょう。

歌人協会の魅力を広範な人に

「時代と暮らしを見据え、自由に豊かに詠う」─これは「新日本歌人」誌の表題に添えてある理念です。この協会の理念、存在を、また民主的な運営で進めている歌会の魅力をどれだけ多くの人たちに知らせることが出来るかが大事です。
そのためには、この間、歌人協会の外に向かって宣伝を強め、支部会員を大きく増やしている支部の経験にも学びながら、新たな分野での方向も探索し、協会挙げて取組んでいく必要があります。その活動を、生き生きと展開することが、入会や購読への大きな条件となるでしょう。
一つに『平和万葉集巻四』の出詠者の集いを各地で組織することも考えましょう。
「平和行進」の参加では、条件のある県、地域では、一定のコースに会員・購読者の参加を募り、新日本歌人の旗を掲げて行進し、終了後「平和歌会」を開くなども考えられます。
啄木祭は現在、東京、静岡で恒例行事として行なっています。東京では五月六日に啄木コンクールの表彰も兼ねて行います。この啄木祭を全国各地で行なうようにする。規模の大小は問わず、協会外の人にも呼びかけて行なうことも大事です。
地域の平和集会などで短歌コーナーを設け、作品展示をしている経験や、会員が関わる諸団体で会員が中心になって歌会を開いている経験にも学びましょう。
若い世代への働きかけは重要です。この間ネットの活用についても努力して来ました。ホームページへのネット歌壇の設置、ツイッター、フェイスブックの開設、リンク先の大幅追加などです。今後これらの効果についての検証もしながら引き続き努力するとともに、その他の分野でも若い世代への働きかけを研究していきたいと思います。

三、創造活動と夏のセミナー

今回の「報告と提案」では、組織の強化に力点を置きましたが、創造面での課題は欠かせません。
この点では、昨年の協会誌二月号の企画、「創刊七〇年に思う」で歴代の代表の所感から学び直すことが大事です。
この中で碓田のぼる氏は「情況に真向かう歌」と題して、次のように指摘しています。「戦後最悪の安倍内閣が暴走しています。これに対する国民の側からの抵抗と反撃は、画期的な歴史的状況をつくっています。…この激動の時代のイマを生きる私たち歌人は、どのようにこの激動の時代を認識し、短歌に向かい合うのか。…いま、私たちに求められていることは、主体性をもって時代に立ち向かう作品における批評性と、人の心に、人間の尊厳を守る声として届き、連帯をつくり出すほどの、社会化された、あらゆる抒情精神─言葉の力─と言ったことではないか」。
この指摘に応え、協会誌十二月号「この一年、わたしの選んだ十首」に見られるように多くの秀歌がつくられました。この夏には、作品創造の相互研鑽の場としてセミナーを予定しています。準備に当たっては積極的な提案をお願いします。

四、全国幹事の役割

組織の強化については、支部・歌会でも一定の時間を割いて論議し、具体化を図りましょう。その際、全国幹事は全国的な視野に立って討論に参加し、実践の先頭にたって欲しいと思います。
昨年十一月の「万葉集発刊のつどい」の成功の蔭には参加者の組織を最後まで追及した関東近県の全国幹事、支部長の果たした役割は大きく、全国幹事の皆さんには、今後の協会の発展のために創造、組織の両面にわたって引き続いての努力をお願いするところです。
組織強化の具体的課題の一つとして、常任幹事会の確立の課題があります。「新日本歌人」誌の毎月発行、諸行事の企画・運営、財政活動などを担う上で常任幹事会の役割は重要です。しかしこの常任幹事のなり手が少なく、毎年悩んでいます。支部の課題の重要な一つとして常任幹事会の強化を据え、積極的に常任幹事を送るようにする、このためにも全国幹事は大きな力を発揮して戴きたいと思います。

五、中間監査について

規約が改定されてから中間監査は総会の翌年の全国幹事会に合わせて行なって来ました。しかしこの時期に行なうと総会後七カ月での監査で、中間にはそぐわない状況でした。そこで今年から、丸一年の時点で中間監査を行い、これを常任幹事会で確認し、夏のセミナーで報告することにします。

六、事務所移転

現在の事務所に移転したのが二年前、以後、ビルのオーナーが代わり建て替えを理由に退去の提示がされています。退去期限は今秋で、新事務所移転に向けて、物件など準備を進めていきます。常任幹事の任務が過多でもあり、移転準備委員など協力も得たいと考えます。



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