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二〇一八年 全国幹事会への報告と提案

三月二十五・二十六日 常任幹事会

短歌創造と改憲阻止を結び、会員・購読者を大きく増やそう!

─時代と暮らしを見据え、自由に豊かに詠う─

一、はじめに

今回の全国幹事会では、夏の第五十三回総会に向け、前総会(二〇一六年八月)決定の全面実践の立場に立って当面及び今後の方針を具体化すること、併せて新日本歌人協会の財政状況を報告し改善に向けての議論を考えています。
なお、昨年十一月に事務所を移転しました。新事務所の最寄り駅は前事務所と同じJR大塚駅で、駅からやや近くなりました。今後この事務所を拠点として、新日本歌人協会の新しい活動と運動を築きあげていきます。

二、安倍改憲NO!に大きな力を

かつての戦争により国の内外に計り知れない犠牲がもたらされ、その痛切な反省の上に国の政治も文化も再建を踏み出してから七十二年を経ました。その間の大きな指針として憲法がありました。
わたしたちの新日本歌人協会の創立と目指してきた短歌運動も「平和と進歩、民主主義をめざす立場から、広範な人びとの生活・感情・思想を短歌を通じて豊かに表現し、将来に発展させること」で、まさしくこうした憲法の理念と合致するものです。
ところが今ふたたび平和を危うくし、戦争への選択をもできる国にしていこうという動きが急速に強まっています。安倍政権は、これまで秘密保護法、集団的自衛権行使容認、共謀罪法の強行など、国会での多数議席を振りかざして暴走を重ねてきました。そして、その総仕上げとして憲法の改定、沖縄の辺野古への新基地建設、労働法制の改悪、社会保障の切り捨てなどを推し進めようとしています。
焦点は、九条を中心とした憲法の改悪で、安倍首相は改憲案の発議を今年中の国会に提出すると表明しています。ひとたび安倍政権の目論見を許すなら、日本はアメリカが引き起こす戦争に大手を振って軍事支援をする軍隊を持つことになり、世界の平和、ひいては日本国土に、また私たちの生活に影響が及ぶようになることは避けられません。このような事態は絶対に許してはなりません。
全国で「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」が呼び掛けた三〇〇〇万署名が取り組まれています。構成団体には大江健三郎、澤地久枝さんらの「九条の会」も加わっており、新日本歌人協会としても事務局の一端を担っている「憲法九条を守る歌人の会」の一員としてこの署名を積極的に進めていきましょう。また、改憲勢力に抗しての各種企画への協会員への積極的参加、各地でのつどい、集会など行える支援も図っていきます。その際、九条歌人の会の発行した「歌集・憲法を詠む 第十集」の積極的活用も図っていきましょう。
運動を進めるうえで、「新日本歌人」誌に連載してきた「憲法随想」をも現時点での総集編としてまとめ普及したいと考えています。「憲法随想」は十年以上にわたり様々な分野の一三〇余名もの方々に執筆を依頼してきたもので、多角的視点で語られてきた憲法への思いは必ず運動への大きな力になるでしょう。

三、今を積極的に詠おう─創造活動について

本来の憲法擁護義務などを投げ捨て、「憲法改定」を強引にもくろむ安倍政権と国民とのたたかいは戦後日本の平和のあり方の根本を問う問題として激しさを増してゆくことは必至でしょう。それは先のトランプ大統領が来日の際にアメリカ製の武器の厖大な購入を要求したように、同時に国民多数のいのちと暮らしに関わる予算を圧迫し、福祉・社会保障をも大きく後退させていく深刻な問題に通じるものです。こうしたなかでさまざまな生活分野での今日的情況を如実に反映した作品が毎月の協会誌への投稿として寄せられています。そうした日ごろの作品創造活動・運動のいわば組織的な集約として、また協会内に止まらない幅広く呼びかけたものとして『平和万葉集(巻四)』や『歌集・憲法を詠む(第十集)』などの取り組みがあり、成果があるのです。
わたしたちの短歌へのかかわり、愛好は一人ひとりでは小さい行為ですがこうした全体のものとして俯瞰したとき、思いがけない大きなものとなっています。このことをしっかりと考えてみると、わたしたちが新日本歌人協会に入会しその中で短歌をつくり詠んでいくことのやり甲斐と魅力は大きく膨らんでいくと思います。

 作品投稿のすすめ

わたしたちはまず何よりも短歌をつくり読むことをもとめています。日々のなかに生起するさまざまな出来事やそれぞれに心を動かされたことのおもいを短歌に書きとめ記録しています。そうした人の作品投稿が増え、受け止めていくことは最も大切な課題であり、会員としての活動の中心です。
例えば今年一月号の投稿者でみれば二六八名で会員比率では53%、購読者は三九名で購読者比は8%でした。この状況は会員の投稿傾向がここ数年やや下降気味であることです。読者歌壇のほうはやや増えているもののまだまだ少なく、どちらもいま一つ積極的な作品づくり作品投稿への意欲を促す支部歌会、周辺の会員の援助と協力が必要だと思います。
協会誌表紙にも掲げている「時代と暮らしを見据え、自由に豊かに詠う」ということの意味を語り話し合って、作品をつくる生きがいや楽しみをひろげてほしいと思います。

 合同歌集の発行

『平和万葉集(巻四)』編纂・刊行は新日本歌人協会創立七〇周年の事業のひとつでもありました。これに引き続いて協会会員・購読者によるアンソロジーとして新日本歌人協会『合同歌集』の編纂を行うことを提案します。協会としての『合同歌集』編纂は二〇〇二年の『世紀の風』の刊行以来十六年を経過しています。この間に協会誌の一定の充実が進み、また会員個々による歌集編集刊行がかなり積極的に行われてきました。しかし、一方で個人歌集刊行に技術的・経済的に困難な会員も増えています。そうした観点から『合同歌集』編纂・刊行の意義を考えます。
『合同歌集』作品募集、編纂・刊行時期等については別途具体的に提案します。

 啄木コンクール

二〇一八年度啄木コンクールの応募は、昨年の啄木祭の時点で応募要項を発表し、全体で一五〇篇の目標を設定して「北から南から」で全国の支部、歌会に働きかけ、「応募ガイド」にも掲載、歌人協会ホームページなどでも広く呼びかけてきました。一月末に締切り、一次、二次の選考を経て、決定は三月末、表彰は五月開催予定の啄木祭で行うことにしています。
四、千名の回復、さらに前進を─組織活動について
組織活動では二つの課題に直面しています。一つは協会の会員・購読者をいかに維持し増やすかであり、二つ目は協会の運営の体制の確立、とりわけ常任幹事会をいかに確立し、構成するかです。この課題は、創立七十二周年を迎えた新日本歌人協会の歴史と伝統を、今後将来にわたって継承、発展させていくことが出来るか否かが問われる課題です。
一つ目の会員・購読者の拡大については、一〇〇〇名の会員・購読者に到達した後、一一〇〇名の目標を定めました。しかしこのところ会員・購読者の総数は漸減傾向にあり、昨年末には会員・購読者計で九六五名となっています。
一〇〇〇名にこだわり、一一〇〇名の目標を持ったのは、協会財政の安定、歌人協会が歌壇の中で相応の発言力を得る力をもつ、また、歌会や支部に、新しい仲間を加えることによって新鮮な活力が生まれ、そこに作品創造への意欲が生まれることにありました。
この間の拡大の経験では活動の場や友人知人に止まらず、兄弟や従妹など、身近な関係をもとに見本誌を送り、購読者になってもらう経験が生まれています。これに学べばまだまだ身近にも多くの対象者がいるのではないでしょうか。
総会に向けて当面一〇〇〇名の回復、そして一一〇〇名に向かって取り組みを強めましょう。
二つ目は、常幹体制をいかに確立するかの問題です。残念なことに、一昨年の総会で選出された河村澄子さん、菊池東太郎さんが任期途中で亡くなられました。現在の常幹は、従来から比べて人数が少なく、それぞれ家庭の事情を抱えながら、また、片道三~四時間ほどを要して任務に当たっている人もいます。そうした献身的な頑張りに支えられているものの、決して好ましい状況ではありません。それだけに、より多くの方々の自覚的な支援が求められています。総会での役員改選に向けて、支部、会員のご協力を要請します。

 啄木祭

今年の啄木祭は四月十四日(土)に埼玉・三郷市、五月十三日(日)には啄木コンクール表彰も行う東京・お茶の水の全労連会館、六月二十四日(日)に大阪・扇町国労会館が決まり、静岡でも引き続いて準備が進められています。啄木祭は協会創立二カ月後に第一回が神田共立講堂で開催されたことを思うと、重要な位置づけとしてこれからも規模の大小にかかわらず全国各地での集会、開催を呼びかけます。

五、財政の改善について

財政の現状は、収支のマイナス傾向が続く厳しい状況です。
今後も収支は、大幅な会員、購読者の増加が見込めない上に、事務所移転に伴う家賃の値上げもあり、加えて来年の消費税10%への増税が控えていてこのままでは一路急速な悪化が予想されます。協会財政の収支改善・安定化の確立を図らなければなりませんが、その必要額は、家賃の増額も含め年額一四四万円ほどの試算となります。ちなみにこの費用増は、会員・購読者半々とすると年間で一〇〇人の純増が必要で、全国幹事一人当たりでは年間一会員と一購読者、同じく一支部当たりでも同様で達成できる数字ではあります。
会費・購読費は長年にわたって据え置いてきました。会費は一九九三年に会費一四〇〇円、購読費八〇〇円に定め、二〇〇二年に郵送料として徴収していた月額五〇円をそれぞれに繰り入れをし、会費一四五〇円 購読費八五〇円に改定し現在に至っています。この間に消費税が5%から8%に引き上げられ、郵便料金などの値上げがありました。価格据え置きで財政を維持できたのは、支部、会員の努力による会員・購読者の増加、常任幹事もほとんど手弁当で任務に当たってきたことなどにあります。現在常任幹事会としては協会誌の紙質変更で製作費を抑え、経費節減の努力をしています。また長期未納者が出ないように納入を促す手立ても講じています。しかしそれで解決できる収支状況でありません。
会費改定は概ね月額一五〇円増程度が考えられます。改定の具体的な試案は別途提案します。
以上、報告と提案とします。



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