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【文団連声明】東京オリンピック・パラリンピックの開催をいまこそ勇気をもって見直してください

文団連の2021年4月1日の声明を紹介します。

(声明)東京オリンピック・パラリンピックの開催をいまこそ勇気をもって見直してください

 

私たち文化団体連絡会議は2月28日付で「東京オリンピックは中止して下さい」と声明を発表しました。その時に懸念した問題がいまなお続いております。良好な見通しが何ひとつ出ていないばかりか、ますます心配と不安が大きくなっております。

開催に対する国内外の多くの“中止に!延期に!”という声を無視して「安心・安全優先の大会に!」と、去る3月25日に聖火リレーがスタートしました。「機運を高めて、広く日本中の皆様に大会が近づいていることを実感して頂く機会に」という開催を当然視した菅首相のことばは虚しいだけです。安心・安全…? 機運を高める…? ことばが宙を舞っているようで、受け止めることができません。

日本中が、世界中がコロナ感染で困難な状況にあるいま、何故開催するのか…?

私たちは世界平和に寄与するスポーツ祭典であるオリンピック開催の意義を認めない訳ではありません。人々に喜びや活力、希望をもたらすものであることを理解しております。スポーツは、私たち文化関係者の活動、演劇・音楽、・文学・美術などと同等に、人間らしく豊かに生きるために必要な掛け替えのないものです。

しかし、いまオリンピックの開催には無理があります。緊急事態宣言が解除されてこの間、変異株も含めて感染が増え続けております。専門家は感染第4波を警告しております。肝心な医療現場からの “疲労は極限まで高まっており、もう持ちこたえられない、迅速で的確な支援を! ”という訴えには即応しなければならない上に、より以上の医療体制が必要となるでしょう。そしてコロナ禍で仕事を失った人、経営困難に落ち入った店主、学業を諦める学生、家賃を払えない人、そして高齢者には医療費2倍化法案、等々きびしさと困難が拡大しております。聖火ランナーのスタート地の福島からは、“復興はまだまだなのに、オリンピックどころではない ” “生業いを返せ! 今苦しんでいる人たちを救ってほしい ” “国民の暮らしと健康を優先して欲しい ”等の声が上がっています。いまこれらの人たちに寄り添うことこそ急務です。

文化関係者も、それぞれコロナ感染に気を配り努力を重ねておりますが、文化の灯を消さないためにと頑張れば頑張る程赤字。小劇場は閉鎖するところも出ております。またフリーランスに対する支援が無い中で、アーティストやスタッフをしていた人たちは転業し芸術活動から離れざるを得ないというのが実態です。

生活の中に生きるきめ細かな文化活動の灯が消えてしまいそうです。人々の暮らしに豊かな文化を根付かせるためにも国の支援が必要です。

「人類が新型コロナに打ち勝った証」「東日本大震災からの復興を世界に発信する機会」という菅首相。何を持ってそういうのでしょうか。

なぜそうまでしてオリンピックを開催しなければならないのか?

菅首相はこの日本の実情を、国民の苦しさを肌で感じているのでしょうか。

憲法で保障されている健康で文化的な生活を国民が享受できるように、何より国民の命と暮らしを守るために働いて欲しい。コロナ禍のいま、それが欠けています。

いま最優先しなければならないのは、オリンピックにかける莫大な費用をコロナ対策に使用することです。

 

勿論オリンピックの開催を楽しみにしている人もいるでしょう。また、強引に開催することもできるでしょう。そして大事に至らずに終わるかもしれません。

しかし、そうだとしても、多くの犠牲を強いた上、国内外のたくさんの人たちが問題視しているオリンピックの強行開催は、だれのための、何のための開催であったのかと、問われ続けることになるでしょう。

 

アスリートの皆さんに同情する声も聞きますが、種別ごとの大会もある訳ですから、力を発揮する場は得られるはずです。関係者はそのためにこそ力を尽くすべきです。

 

本当に「安心・安全の大会に!」というならば、国内の多くの人たち、そして世界中の人たちが、歓びと希望を持って交流出来る時に開催するべきだと思います。

 

今夏の東京オリンピック・パラリンピックの開催は、勇気ある見直しを切望します。

 

2021年4月1日

文化団体連絡会議



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