新日本歌人

新日本歌人 入会のご案内

短歌のいろは

わたしがこれまでに関わった支部や短歌サークルの方々の作品を添削した例です。

作歌の参考にして下さい。(2013年9月)

新日本歌人協会選者 奈良達雄

 

1 . たった一、二語を変えるだけで

 

短歌は、たった一、二語を変えるだけで、思いが深まったり、調べが整ったりします。一首出来上がったら、もっと適切な言葉はないか、推敲してみることが大切です。

 

①  原  歌  寒さには強いと言いつつ重ね着しこんな筈ではと歳を知りたり

添削歌  寒さには強いと言いつつ重ね着しこんな筈ではと歳を悟れり

 

「知りたり」でもいいのですが、「悟れり」の方が意味が深くなります。高齢化への悩みのりこえて行く覚悟を滲ませることができると思います。

 

②  原  歌  飯館の除染につきし若者が得し賃金の安さを語る

添削歌  飯館の除染につきし若者が得し賃金の安さを嘆く

 

「安さを語る」は、賃金が安いということを話した説明に終わっています。若者が賃金の安いことを語ったのは、もっと上げてほしいという気持ちからではないか。それがすぐには希望通りには行かない、そのもどかしさを察すると、「安さを嘆く」とした方が、より適切だと考えます。

 

③  原  歌  「古河三十六度C」テレビで見たと連絡をしてくる友がふるさとに居る

添削歌  「古河三十六度C」テレビで見たとわれの身を気遣う友がふるさとに居る

 

「連絡をしてくる友が」いるのは事実でしょう。作者はありがたい気持ちからこの歌を詠んだのでしょうから・・・。この場合の「連絡」はただ事柄を伝えるだけの「連絡」ではありません。作者が異常な暑さで健康を害しているのではとの思いから、電話してきたのです。「われの身を気遣う友が」とした方が、友人の気持ちに添うと思ったのです。作者のふるさとが、避暑地とも言えるところであることを知っているわたしには、良いお友達を持っている作者の幸せを思わずにおれません。

 

④  原  歌  原爆を許してならじと歩きいる平和行進灼熱のなか

添削歌  原爆を許してならじと列を組む平和行進灼熱のなか

 

三句の「歩きいる」が、もちろん間違っているとは思いません。しかし作者が「灼熱のなか」と詠うほどの暑さのなか、核兵器の廃絶を心から求めて歩いている人たち。志を同じくしている人たちだと思うと、ただ「歩きいる」でなく、「列を組む」としたかったのです。

⑤  原  歌  事業所は二箇所でヘルパーする息子われの年金に届かぬ給料

添削歌  事業所は二箇所でヘルパーする息子われの年金に届かぬ額で

 

原作は上句と下句が体言(名詞)で止められているので、やや突き放した表現になっています。結句を、「届かぬ額で」とすると、「ヘルパーする息子」に返る倒置法が成り立ちます。上句と下句がつながり、やわらかい表現になることを味わってほしいものです。

 

⑥  原  歌  夫婦揃い祝いやせんと詠いたる友いかに在す妻見送りて

添削歌  夫婦揃い祝いやせんと詠いたる友いかに在す妻身罷りて

 

結句、「見送りて」では、長期療養や協議離婚の場合も考えられます。亡くなられたことをはっきりさせるために、「身罷りて」を使いました。文語表現の短歌にはよく使われる言葉です。

 

⑦  原  歌  しみじみとよき日を刻む胸の中にむすこの結婚式終えて

添削歌  しみじみとよき日を刻む胸の中にむすこの婚儀めでたく終えて

 

「結婚式」の代わりに「婚儀」を使って下句の調べを整えました。「めでたく」は、「祝われるべき」「慶賀されるべき」の意味でなく、「とどこおりなく」くらいの意味です。

 

 

 

わたしがこれまでに関わった支部や短歌サークルの方々の作品を添削した例です。

作歌の参考にして下さい。(2013年10月)

新日本歌人協会選者  奈良達雄

 

 2.説明調を改める

 

歌会で、よく「説明調だ」と批判されることがあります。どこが説明になっているか、例歌と添削歌を比べてみてみて下さい。

 

①原  歌  味噌汁にあおさ入れれば拡がりて南の海の香が匂い立つ

添削歌  味噌汁のあおさ見る見る拡がりて南の海の香が匂い立つ

 

添削歌は、「入れれば」という説明を省き、いきなり味噌汁の中のあおさの変化を描写したのです。どちらが生き生きした歌か、お分かりでしょう。

 

➁原  歌  母の日にベランダの鉢にミニバラは祝うが如く朱の色染め

添削歌  ミニバラは朱も鮮やかに鉢に咲く母の長寿を祝うが如く

 

この場合、鉢がどこにあるかはそれほど重要ではありません。それよりも、バラの花の様子を描くことです。

 

③原  歌  解雇され四十二年続きたる新年会に仲間集まる

添削歌  解雇にも四十二年怯まずに闘う仲間今年も集う

 

原歌は、解雇された仲間が四十二年続く新年会に集まりました、という報告に終わっています。「怯まずに闘う仲間」とすることで、作者の思いを盛り込むことができると思います。

 

④原  歌  セリとフキ()()の作物いただきて食事をしてる至福どき

添削歌   歌の友が丹精込めし芹と蕗夕餉の卓を彩りており

 

「至福どき」は主観的な言葉です。作者がそう言ってしまうのでなく、読む人に感じさせる。客観的描写を大切にしたいものです。「丹精込めし」とすることで感謝の思いを、「夕餉の卓を彩りており」で、至福の思いを出したつもりです。

 

⑤原  歌  ムバラクに退陣求める百万人アレクサンドリア・タハリール広場に

添削歌  ムバラクに退陣求める百万人タハリール広場に抗議渦捲く

 

原歌は、ムバラクの退陣を求めて百万人が広場に集まりました、という説明に終わった感じです。結句で人々の気持ちを表現してみました。

 

⑥原  歌  鼻からもツララの下がれる気分なり地吹雪き逆まく戦場ヶ原歩き

添削歌  鼻からもツララの下がる思いなり戦場ヶ原地吹雪き()()

結句「戦場ヶ原歩き」が説明調です。「地吹雪き()()く」と最後まで客観的に描写して、戦場ヶ原を歩いていることを自然に判るようにしたのです。

 

⑦原  歌  船室におとぎ話を島口で語りし人に孫のごと聞く

添削歌  島口でおとぎ話を語る老い  孫のごと聴く船に揺れつつ

 

初句の「船室に」が説明です。だから「語りし人に」と、句の終りの音が重なってしまうのす。結句「船に揺れつつ」と客観的な描写で、船室で聴いていることを自然に判るようにしてみました。

 

⑧原  歌  新品のスピーカーに買い替えてTPP反対の声上げ訴う

添削歌  新品のスピーカー頼れる武器としてTPP反対に声強めゆく

 

「買い替えて」要らない説明です。「新品のスピーカー」で分るのです。仮にもらった物だとしても説明は要りません。仮に「頼れる武器として」と、新品のスピーカーに替えた気持ちを補ってみました。

 

わたしがこれまでに関わった支部や短歌サークルの方々の作品を添削した例です。

作歌の参考にして下さい。(2014年7月)

新日本歌人協会選者  奈良達雄

 

3.抽象化せず具象的に詠む

短歌は一般に短く表現することを求められますが、出来るだけ具象的に詠んだ方が

イメージしやすい場合もあります。

 

① 原  歌  「持ってけし」あれもこれもと義姉たちは車いっぱい足下にまで

添削歌  「持ってけし」米・味噌・野菜・姉たちは車に積みぬ足下にまで

 

「持ってけし」は北陸の方言、「持っていきなさい」の意味です。

原歌は、「あれもこれもと」となっていますが、作者にうかがったら、お米、味噌、野菜

などを上げたので、そのまま詠み込みました。「あれもこれも」よりずっと分り易くなったと

思います。

 

②  原  歌  中学校の図書館書庫に隠れいし新書版のプロレタリア文学

添削歌  中学校の図書館書庫に隠れいし新書版なる「党生活者」

 

「プロレタリア文学」では一般的過ぎます。たくさんあったのでそう表現したのでしょう。

でも一つに絞った方がインパクトがでます。「新書版なる『蟹工船』も」でも・・・。

 

③  原  歌  豆投げてやると勇ましい二歳児はあっという間に鬼に完敗

添削歌  豆投げてやると勇みし二歳児は鬼のお面にワット泣き出す

 

「鬼に完敗」は作者が抽象化してしまった表現です。二歳児の行動を具体的に描いた

方が面白味が出ると思います。

 

④  原  歌  美恵子さんから時折り届きし我が好み形身となりて身近にありし

添削歌  美恵子さんから時折り届きしショールなど形身となりて身近かにありきいんしょばん

 

「我が好み」、作者は分っても読む人には分りません。作者に「美恵子さんから贈られた

物で一番心に残っているのは」と伺ったら「ショール」だとのこと、それで添削歌のように

なりました。

 

⑤  原  歌  生命どう宝人殺しの島にはすまじ右手には杖を左手に旗

添削歌  人を殺める島にはすまじ杖をつく身なれど旗を輝かせて起つ

「生命どう宝」という使い慣れた言葉を省き、三句以下を具象的に詠んで、作者の

意気ごみを示しました。

 

⑥  原  歌  長崎の遺跡をめぐる若者は資料片手に三十余人

添削歌  三十余人遺跡をめぐりの瞳が光る若きらに語り継ぐ長崎の惨

 

「長崎の遺跡」では、隠れキリシタンの遺跡か出島のそれか、それともジャパゆきさん

の遺跡かわかりません。作者の立場は、若者のひとりなのか、遺跡めぐりの人々を見てい

る観光客なのか、よく分りません。作者にうかがったら原爆の遺跡めぐりを案内した時のこ

とだとのこと、添削歌は事情が全て分るように、そして作者の誇りも盛り込んであります。

 

以上六つの例で、抽象的にまとめてしまうのでなく、具象的に詠むとはどういううことか、

お分かりいただけたと思います。

4.分かり易く順序を整える

 

1 ひとしきりおれおれ詐欺の手口言いあたふた帰る息子立ち寄り

帰ったことが先に、立ち寄ったことが後になっていますが、順序どおりに詠んだ方が分かり易いと思います。

立ち寄りておれおれ詐欺の手口など我にふくめて子は帰り行く

 

2 残せるかあとに生まれる者たちへ島の木を切るチップ工場

原歌は一見、チップ工場をのこしたいのか、と思いました。

 

チップ工場から木々を守らん豊かなる緑の島を継ぎゆく者へ

 

3 玉葱を刻み流れる涙はつづく拉致されし母の迫る言葉に

原歌、一読して母が拉致されたのかと取られそうです。

玉葱刻み流れる涙とどまらず()を拉致されし母の言葉に

 

4 朗々と意味深まりて吟詠は我が身正してしばし聴き入る

「朗々と」は、吟詠の様子で、朗々といみが深まるのではありません。

朗々と吟ずるを聴けば詩の意味も深まる如し身を正しおり

 

5 鳴き交わす声の頻りにヨシキリは枯葦群の中より聞こゆ

このまま読むと、ヨシキリが聞こえたことになります。聞こえたのはヨシキリの声です。

 

鳴き交わすヨシキリの声枯葦の群の中より頻り聞こゆる

 

* 一首詠んだら、何度も読み直して、読む人に分るよう、順序を整えることを心がけるようにして下さい。

 

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